幻奏少女
「あ、美味しい」
「ほらほら、どうぞ、えと……」
「朔羅です」
「そか、朔羅ちゃんも」
「……いただきます」
少し酸味のきいたそれは、口のなかで溶けるように、仄かな甘みを残して消えて。
さすが佐藤さん。
「感想は?」
「めちゃめちゃ美味しい! 凄い!」
朔羅が、メイド見習いに負けないくらいのハイテンションで、いつになく子供のような笑顔で言った。
「伝えておきますね」
それに笑顔で応じるメイド見習い。
やがて、食べおわった皿をトレイに載せ、彼女は去って行った。
まるで台風だ、掻き乱すだけ掻き乱し、あっけなく去る。