リアル☆タイムスリップ
---実行犯は……。多分芹沢の近くにいる人たちだろうな---

 さっきはおそらく巡視から帰って来た一団がいたので羽織を着ている者がいたため見分けがついたが、今は皆普通の着物だ。
 しかも皆総髪の髷なので、さらに見分けがつかない。

 だが少なくとも近藤は芹沢の近くにいるだろう。
 土方もか。

---つか時計がないから時間がわからん---

 普段から腕時計をしないので、今が何時かわからない。
 つくづく昔の人って凄いよなぁと思いつつ、正宗はとにかく目立たないよう隅のほうで様子を窺った。

 やがて芹沢が腰を上げた。
 続いてその辺にいた男が何人か腰を上げる。

---てことは、あれが実行犯だな---

 ちらりと目を向けてみても、やっぱり誰が誰やらわからない。
 芹沢暗殺実行犯はいろいろな説がある。
 歴史的な場面が今から始まるわけだが、残念ながら首は突っ込めない。

---ていうか、そんなことより何でこんなことになったのか、だよ。戻る方法を考えないと---

 タイムスリップした者は大抵そこの誰ぞと恋仲になり、一緒にその時代で活躍したりするものだが、現実ではあり得ない。
 そもそもそんな気分になど到底なれないのだ。

 まず感覚が違う。
 いきなりこんな剣客集団に放り込まれたところで、真剣を抜いたこともない現代っ子が人を斬れるわけもない。

---いや、真剣は抜いたな---

 蜥蜴丸。
 そうだ、あの刀を抜いてからではないだろうか。
 ということは、もう一度蜥蜴丸を抜けば帰れるのではないか?

「そうか! きっとそうだ!」

 希望が見え、正宗は、がばっと立ち上がった。
 もう周りはほぼ出来上がっている。

 見れば上層部がいなくなっているので、皆気が抜けたのだろう。
 鬼の芹沢と鬼の副長の目がある前で、気持ちよく酔えるわけはない。

 そそくさと、正宗は広間を後にした。
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