リアル☆タイムスリップ
 噛みそうになりながら、脳みそをフル回転させて言葉を紡ぐ。
 持っている歴史的知識をフル活用しなければ、喋ることもままならない。

「……そうか。だからちょいと妙な格好なわけだな。でも神職に化けるのも有りかもしれねぇ。京にゃ神社が多いしな。お前、名は?」

「は、大江……正宗と申します」

 はたして下手に本名を名乗っていいものか、と思ったが、他の誰かになりすますのもどうなのだろう。
 タイムスリップした者は歴史に関わるべきではない、というのは大原則だと思うのだが、そうもいかないものなのだな、と冷や汗を流しながら、とにかく大事にならないよう必要事項だけを答えた。

「大江か。お前、こっちが得意でないなら、監察方になるか?」

 近藤は屈託なく笑いながら、蜥蜴丸を、びゅん、と振った。
 がっ! と先程正宗が付けた門柱の僅かな傷の下に、深く刃が食い込む。

「は。あ、ありがたき幸せにございます」

 全然ありがたくないが、こういうときどう返すのがこの時代の礼儀なのかもよくわからない。
 とにかく機嫌を損ねないようにだけ気を付けて、正宗はひたすら頭を下げ続けた。

 とりあえず、今日は楽しめ、と言い残し、近藤は蜥蜴丸を正宗に返すと、門を出て行った。
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