リアル☆タイムスリップ
「……はぁ」

 姿が見えなくなってから、大きく息を吐く。
 イメージよりも大分小さかったが、さすが最強剣客集団と後世にまで伝わる猛者を束ねるだけはある。

 現代人とは比べようもないほどの威圧感だ。
 これほどの気、現代で持ち得る者などいないだろう。

『どうする? 八木の屯所に駆けつけるか?』

 ふるふると、正宗は首を振った。
 門柱に手をついて、深呼吸する。

「行ってどうなる。変に歴史を変えても不味いだろ。襲撃に参加するのもまっぴらだし」

『まぁそうじゃの。わしがおぬしを操れば、刀もそれなりに使えようが』

「え、そうなのか? じゃあ頼む」

『おいおい、そんな簡単に身体を手放すな。それこそ漫画じゃないのだから、出たり入ったりなんぞ出来んぞ。完全におぬしを乗っ取るか、はたまたおぬしの気が触れるかじゃ』

「そういうものか」

『そういうものよ。簡単なことじゃ、自我のあるものの中になど、簡単に入れるわけなかろうが』

 つまり元の自我を食い尽くさないと器を操ることなど不可能、ということか。
 空恐ろしいことだが、それもそうかと納得する。

『ま、そうこうしとるうちに、事は終わっておろう』

「そうだね……。とりあえず、どっかに逃げたいところだけど、脱走は重罪だ。かくなる上は、とにかく目立たず帰るまで過ごす」

 のろのろと、正宗は屯所である前川邸へと帰って行った。
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