リアル☆タイムスリップ
 正宗は祠の回廊に仰向けに転がった。
 周りの鬱蒼とした木々の間から、爽やかな青空が覗いている。

 大学では史学を専攻している。
 この神社には古い書物がたくさんある。

 古文書を読み解いたりするのに、大学の授業はなかなか役に立った。
 あまりに昔のものは無理だが、江戸時代ぐらいの手紙であれば、難なく読める。

「次の連休には、京都に行こうかな」

 ごろごろしながら呟くと、不意にすぐ横の祠の格子戸が、がたた、と鳴った。

『おぬしが京などに行けば、たちまち具合が悪くなるぞ。京の都は千年魔都。なめてかかると酷い目に遭おうぞ』

 格子戸の隙間から、煙のように、もわんと人影が現れた。
 それが若干エコーのかかった声で言う。

「どっちにしろ近々行かないといけない。親父の使いがあるし」

 歴史ある神社なだけに、京のほうにも所縁がある。
 兄が宮司を継いだ後は、父が年に何回か京へ出向いていた。
 それが近年歳のせいで、正宗に回って来たのだ。

『わしも連れて行け』

 ふよふよと浮いたまま、影が言う。

「いや、捕まるよ」

『何、腰に帯びて行けとは言わん。鞄に入れておけばわからんて』
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