リアル☆タイムスリップ
『まぁまだ解明できぬ不思議はある。おそらく此度のタイムスリップは、蜥蜴丸と何らかの繋がりはあろうがな。正宗はちょっと普通と違うから、それと呼応したのやも。とすれば、まぁ諦めるのは早いかもしれぬぞ』

「ないところには帰れないって言ったじゃん。単純明快な答えだよ」

『単純明快であればこそ、ひっくり返ることもある、ということじゃ』

 慰めなんだか本気なんだか。
 が、少し沈んでいた気持ちが浮上した。

『言ってみれば、蜥蜴丸の呪いかのぅ』

 蛍丸の言葉に、浮上した気持ちが一瞬で沈む。

「何だよ、呪いって。封印を解いたからか? つか別に封印もされてなかったし」

『いや、そもそも蜥蜴丸というのはの、愛知県に伝わる妖刀なのよ。その刀身を見た者は不幸になるという言い伝えがある』

「不幸になるかどうかは、まだわからんだろ」

『おう、その意気じゃ。前向きになれば、活路は拓けるものよ』

 でもなぁ、と蛍丸は、母屋のほうを見た。

『角屋で、近藤は蜥蜴丸を見たな。おぬし、近藤の最期を知っておるか? あながち外れではないかもしれぬ』

 ごきゅん、と正宗の喉が鳴った。
 あれだけ幕府のために働いた近藤も、最期は武士としての切腹も許されず、斬首の上、梟首となった。

 いわゆる打ち首獄門。
 最も重い刑である。
 これを不幸と言わずして何と言おうか。

「と、蜥蜴丸を見なければ、あんな最期を迎えずに済んだのか?」

『さあ、それはわからぬ』
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