リアル☆タイムスリップ
 が、ここで正宗は、あれ、と思った。
 もし蜥蜴丸を見たが故の最期なのだったらおかしくないか。

 現代で、蜥蜴丸は正宗の手にあった。
 正宗のタイムスリップと共にここに来て、近藤の目に留まった。

 現代人の正宗と会わなければ、近藤は蜥蜴丸を目にすることもなかったはずだ。
 それが、史実ではあのような悲惨な最期を遂げている。

「まさか、このタイムスリップは必然……?」

 いきなり偶然タイムスリップしたわけではなく、正宗は元々そういう運命であったのか。
 十八歳の初夏に、京都の神社の経堂から新撰組屯所にタイムスリップする。
 そういう運命の輪の中にいる、ということなのだろうか。

『なるほど。それだと楽ちんではないか』

「何が」

『正宗が元々そういう運命であるなら、この過去で何をしても、そういう歴史が実際あった、ということじゃ。歴史を変えるかもしれぬと息を潜めて暮らさんでも、堂々と行動できるのではないか?』

 大江 正宗という人物が、実際にこの過去にいきなり現れる。
 それは元からそういう過去があった、ということなら、その者が過去でしたことも、現代から見たら普通に過去起こったこととして認識される。
 正宗がこの過去で何か大きなことをしでかしても、それは実際過去に起こったことなのだ。

「喜ぶべきことなのか……?」

『何が解決したわけでもないがのぅ。ちょっと自由になった、ということか』

 行動を気にしなくてもいいのは確かに楽だが、完全に過去の人間になってしまったという感じは微妙である。

「だったらとことん、それが本当のことなのか調べてやる」

 がばっと立ち上がり、正宗は屯所を出た。
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