リアル☆タイムスリップ
 がばっと山崎が身を乗り出す。
 あ、やっぱり知らなかったんだ、と思ったが、口から出てしまったものは取り消せない。

「なるほどなぁ。確かに何や四条の辺りは侍が多いと思ったが、ただ花街が近いだけやなかったんやな。目に付くわりには、何や皆押し黙って必要最低限の口しかきかん。下手に喋ったら訛りが出るからや」

 ぱん、と膝を打ち、山崎は立ち上がった。

「よっしゃ。そうとなったら局長に連絡や」

 いそいそと廊下を歩いて行く。
 その後ろ姿を見送って、正宗は複雑な気持ちになった。

 枡屋のことを教えたのは正宗だが、実際近藤に伝えたのは山崎であり、おそらくこの後動くのも史実通りの人々だろう。
 特に知っている歴史が変わっている風はない。

「やっぱりこういうことがあって、知ってる歴史が作られていくのかな」

 だとしたら、正宗は完全に今この新撰組屯所で生きている人間となっているわけで。

「大江 正宗なんて隊士、いたかなぁ……」

『全員の名簿があるわけではなかろう。平の平隊士なんぞ、いちいち保存しているとも思えん』

「悪かったね」

『良いではないか。名が残るほど有名になったら、ろくな最期を迎えん』

「そうかもね……」

 考えてみれば歴史上有名な人物というのは、あまりいい最期を迎えていないかもしれない。

「タイムスリップだけでも結構な不幸なのに、この上死に様も悲惨だったら、目も当てられないよ」

『おぬし、結構楽しんでおると思うが』
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