リアル☆タイムスリップ
「楽しむように努力してんの。まともな神経じゃやってられない。風呂には入れないし、着替えはないし。臭いし不潔だし、金の使い方がわからんから買い物もできない!」

 むきーっと髪を掻き毟る。
 頭が痒くて仕方ない。

 この散切り頭(現代では普通なのだが)も変なのだ。
 が、ほぼいないだけで、短い髪の人物が全くいないわけではない。
 結構何でも『神職だから』で通せるのだ。

「何よりこの状況に慣れてしまう自分が怖い」

『素晴らしい適応力』

「それは蛍丸にも言えるよね。そんなナリで、スマホの操作とか知ってるし」

『ふふふ。知識があるに越したことはないわい』

「確かに。一緒に飛んでくれて良かった」

 つくづく思う。
 こんな状況であってもまともでいられるのは、一人ではないからだ。

 しかも蛍丸は相当な昔から存在しているのだから、時代時代の知識もある。
 辞書と一緒に飛んだようなものだ。

「でも蛍丸をもってしても、帰る方法はわからないんだね」

 はぁ、と大きくため息をつく。

『それは解明されておらぬ故じゃから仕方ない。先にも言ったじゃろ、まだないところに移動はできん。考えるまでもなく、わかり切ったことぞ』

 それはわかっている。
 だが、はいそうですか、で納得できることでもない。

 そもそも正宗はタイムスリップしたくてしたわけではない。
 何かの拍子に飛んだだけなのだから、だったら何かの拍子に帰してくれ、と思うのだ。
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