リアル☆タイムスリップ
 今のところ、物事は史実通りに動いている。
 この後新撰組を一躍有名にする池田屋事件が起こるのだ。
 そこでまた、あることに気付く。

「池田屋当日、隊士の大半は食中りで戦線離脱するんだよな」

『そうじゃったかの。ならその飯を食えば、危険な目に遭わずに寝ていられるぞ』

 池田屋は大捕り物だ。
 普段戦闘に参加しない者も駆り出されるだろう。
 だったら腹痛で寝ておいたほうがよほど安全だ。

 だが。

「いや……。それもキツいぞ」

 現代の世界に誇れるトイレ使用者としては、この時代のトイレなど出来る限り入りたくない。
 トイレというのも憚られる、まさに『便所』というに相応しい。

「あんなところに籠るのも避けたい」

 おそらくここの隊士よりも、正宗が一番腹が弱いだろう。
 誰より長い間、あのあり得ない便所のお世話になりそうだ。

「紙だってお尻が切れそうな硬さだし。まぁ紙があるだけマシなんだろうけど」

 その紙自体も、綺麗なものではないのだ。

『その前に、現代人の腹の弱さから行くと、どっちにしろ命の危険に及ぶかもなぁ』

 そうなのだ。
 どの程度の発酵具合かわからないが、相当ヤバい状態のものを食べれば耐性のない者は死ぬかもしれない。
 下痢になると脱水症状になるし、この時代、スポーツドリンクなどあるわけないのだ。
< 30 / 54 >

この作品をシェア

pagetop