リアル☆タイムスリップ
『わしが物を操れたら、食塩水ぐらい作ってやるがなぁ』

 残念ながら、蛍丸は幽霊のようなもので、物は持てないのだ。

「戦闘に加わるか、ヤバいの覚悟で腐った飯を食うか……。究極の選択だ」

『どっちにしろ即死は難しいのぅ』

 刀での斬り死には痛そうだ。
 悪くしたら腕や足をなくして後々じわじわ死に近づくことになるかもしれない。
 この時代の治療など、信用できない。

「よっぽど腕の良い人に、一太刀で首を落とされるとかされない限りはキツいよな」

『そんなことを出来る人間がいると思うのか?』

「それも物語の中だけか」

『そうよ。首切り役人ですら一刀の下に落とせるものなど、そうおらぬ。皆後頭部を叩いたり耳を飛ばしたり、修羅場の末殺される』

「どっちにしろ修羅場だな……」

 腹を壊しての衰弱死か、戦闘時の斬り死にか。
 うおおお、と悩んでいると、山崎がやって来た。

「大江。ちょっと」

 険しい顔の山崎に連れられ、正宗は近藤の部屋に通された。
 当然土方もいる。

「裏を取ったのは山崎だが、枡屋に目を付けて山崎に進言したのはお前だそうだな」

 いかつい顔の近藤が、穏やかに言った。
 は、と正宗は平伏する。
 下手に目立ちたくないのだが、どうも初めから近藤とは縁があるようだ。

「どこかで聞いた名だと思えば、あのときのもやしっ子か。はは、やはりお前は、監察方が性に合っていたようだな」

 何と答えていいものやら。
 はぁ、と小さく返事をし、とりあえず正宗は平伏したままその場に控えた。
 それにしても、やはり自分は精神面だけでなく、見かけももやしっ子なのだな、とつくづく思う。
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