リアル☆タイムスリップ
---ま、剣術をずーっとしてきた剣客とは、身体付きも違うだろうけどさ---

 ただでさえ近藤らの流派は、実戦を踏まえた木刀での打ち合いを基本としている。
 その木刀とて普通のものよりも大分太い、丸太のようなものなのだ。
 そんなものを四六時中振り回している男と比べれば、正宗など吹けば飛ぶような細さだろう。

「このような体型であれば、誰も警戒しませぬ故」

 もっともらしく言うと、近藤は、なるほど、と手を打った。

「それもそうだな。確かにまさか新撰組の者とは思うまい。うむ、やはり大江に頼もう」

 そう言うと、近藤は古高から聞いた長州の計画を打ち明けた。
 近藤らにとっては寝耳に水の大事件を掴んだのだろうが、正宗にとっては想定内だ。
 そもそも現代人には、そんな危機感はない。

「かくなる上は、一刻も早く長州の奴らを討ち取らねばならん。決行の日までに、どこかに集まるはずだ。そこに踏み込めば、一網打尽にできる」

「さようで」

「それで、山崎と共に市中をくまなく探って欲しいのよ」

「わかりました」

 あっさりと頷き、正宗は内心胸を撫で下ろした。
 おそらくこのままいけば、山崎と共に池田屋の内偵につけるだろう。
 池田屋にいても直接戦闘に加わらないで済む。

「では早速、探索にかかります」

「あ、待て」

 土方が、早々に退出しようとした正宗を呼び止める。

「その格好じゃ、ちょいと目立つだろう。枡屋の探りで、お前のことを覚えてる奴がいるかもしれねぇ。これに着替えて行け」

 渡されたのは奉公人のような粗末な着物だ。

---着替えを貰えるのはありがたいんだけどね……---

 真新しいものでは返って目を引くので、差し出されたのは古びた着物だ。
 洗濯はしているのだろうか、と思いつつ、若干胡乱な目で着物を受け取り、正宗はぺこりと頭を下げると、近藤の部屋を辞した。
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