リアル☆タイムスリップ
「こんなもんかな」

 着替えを済ませ、正宗は屯所を出た。
 思った通り、渡された着物は臭い。

 不思議なもので、自分自身はいくら汚くなろうとそこまで鼻にはつかないのだが、人の臭さはいつまでも鼻につく。
 うんざりしながら、正宗は適当に町を流した。

「まぁ確かに監察方ってのは、俺に向いてるよね」

『わざわざ探らんでも、すでにわかっていることを報告すればいいんじゃしの』

 わかっているのだから楽である。
 適当に時間を置いて、知っていることを報告すればいいのだ。

「こうなったらさぁ、桂を池田屋に足止めしたり、逆に四国屋に局長たち全員を向かわせたりしてやろうか」

『歴史が変わるぞ』

「そんなの、好きでタイムスリップしたんじゃないんだから知ったことかよ。ここで史実と違うでかいことをじゃんじゃんやれば、これはヤバいと誰かが思って帰してくれるかも」

『誰かって誰よ』

「……神様的な何か」

『神様というよりは、呪い的な何かじゃろ。そんなもんにヤバいと思われたら、帰すよりも手っ取り早くこの世界で殺されるわ』

「ほんっと、どう転んでも不幸だねぇ。ええ、ええ、蜥蜴丸の効力や絶大でありますよ」

 やけくそ気味に言いながら、正宗はずんずんと町を北上していった。
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