リアル☆タイムスリップ
「そういえば、何で四国屋にも目を付けたんだろう?」

 ふと疑問に思い、正宗は木屋町に入る通りで足を止めた。
 そして池田屋とは反対側に歩き出す。

『おいおい。ほんとに歴史を変える気か?』

「ていうか、四国屋が正しいって局長らに伝えても、結局いないわけじゃん。そしたらなおさら俺の首がヤバいだろ。自らそんな危険は冒さんよ。それよりも、もうこの時代で知りたいことを調べてやろうと思って。折角の機会だし」

『前向きじゃのぅ』

「でないとやってられないの」

 とりあえず、正宗は懐から出した手拭いで頬っ被りした。
 散切り頭は、全くいないわけではないとはいえ目立つ。
 しかも背もでかいほうになるので、目に付くのだ。

「でもどっちにしろ、この格好では中までは入れないけど」

 着物は変えたが、持ち物まで用意してこなかった。
 手ぶらの町人がふらりと入れるような店ではない。
 できるだけゆっくりと、正宗は狭い通りを歩いて行った。

---う~ん、なかなかそういう人ってわからないもんだね---

 普通の現代人よりは感覚が優れているとはいえ、それはあくまで鈍い現代人と比べての話だ。
 このような殺伐とした時代、中でも戦の中心部になろうとしているところでは、漂う空気そのものが違う。
 誰もかれもが気を張り詰めているように感じ、個々の違いなどわからない。

「喋ってくれるとわかるんだけどな」

『その裏をかけ。やたらと口を噤んでおる奴に目を付ければよい』

「なるほど~」

 ぼそぼそと喋りながら、正宗は注意深く周りを見つつ、木屋町通りを歩いて行った。
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