リアル☆タイムスリップ
 何日か四国屋を張っているうちに、確かにここも長州の常宿になっているのがわかった。
 むしろ池田屋よりもこちらのほうが多い。

「なるほど。だからこそ、長州勢はこっちを避けたんだな」

『実際人数の多い土方隊は、こっちに向かったのだしの』

「うむ、敵ながらあっぱれ」

 相変わらずぼそぼそと言いながら、正宗はその日もそろそろと屯所に帰った。
 来た時も暑かったが、最近また暑くなってきた。

 町の空気もどこか賑々しくなっている。
 祭りが近いのだ。

---そろそろ出動だよな。でも最近山崎さんを見ないな---

 雰囲気的に、今日明日レベルの近さで祇園祭だ。
 なのに監察方の要の山崎がいないとはどういうことだ。
 疑問に思っていると、隊士の一人が正宗を呼んだ。

「近藤局長がお呼びです」

---あれ? 俺が新撰組を動かすことになるのか?---

 そうなれば、歴史の重要な事件を左右することになる。
 いざそうなると、ぞくりと背筋が寒くなる。

---いや、まだわからん。山崎さんが何か掴んできたのかもしれないし---

 そう思ったが、近藤の部屋には山崎の姿はなかった。
 正宗の姿を認めると、すぐに近藤が口を開く。

「山崎との連絡が取れないのだ」

「え? ……それは、どういう……」

 思わぬ事態だ。
 ちらりと傍らを見ると、土方も渋い顔をしている。

「前の古高の証言で、祭りの前にあの計画が実行されると知れた。となるとそろそろだってぇのに、ここにきてあいつの足取りがぱったりだ。まさかとは思うが、捕えられたかもしれん」
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