リアル☆タイムスリップ
第六章
 早くも次の日の夕刻には動きがあった。
 日が落ちるに従って、一人二人と屯所を出ていく。
 いよいよ池田屋事件の幕開けだ。

「ていうか、山崎さんは、いまだに連絡もないし」

 結局新撰組は二手に分かれて木屋町を順に検めていく。
 山崎がどうこう、というのは出て来ない。
 ということは、このままの流れでいいのだろうか。

 どちらにしろ、このまま屯所にいたら否応なしに戦闘に引っ張り込まれるだろう。
 やはりヤバいとわかっている飯を食う勇気もないので、正宗はいつものように探索重視で屯所を出た。

「池田屋に行ってみるか」

 おそらく山崎が潜んでいるとしたら池田屋だろう。
 近藤らが到着したとき、中から鍵を開けたのは山崎だ。

 今日は旅人のような格好をしている。
 中まで入ってもおかしくない。

 正宗は堂々と、池田屋の暖簾を潜った。
 ぱらぱらと客の姿がある。

「いらっしゃい。お泊りでしたら、生憎今日はいっぱいで」

 中から出て来た女将が言う。

「おや、皆祭り見物かい。いや何、ちょいと足を痛めてな。じゃあ治療だけでもさせて貰ってもいいかい」

「それなら丁度、上方の薬屋さんが来てますよ」

 やはり、と正宗は上がり框に腰掛けて、肩にかけていた荷物を取った。

『おぬしにしては機転が利いておるの』

「祭りで店が混んでるのは想定済みだ。山崎さんが薬屋として入り込んでるのも想定済み。下手にお金使えないからね」

 まだこの時代の通貨のことはさっぱりだ。
 物価もわからないので下手にものも買えない。
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