リアル☆タイムスリップ
「ていうか! えらい時間がかかったじゃないか!」

 だだだだだーっと正宗は、とっぷりと更けた京の町を疾走していた。
 薬は思いのほか多かった。
 ここまで! と打ち切るわけにもいかず、最後まで配ったのだが、都度水を汲んで与えていたため非常に時間を食った。

「今一体何時(なんどき)だよ!」

 時計がないというのは、こうも不便なものか。
 時間がわかれば、近藤らがどの辺りにいるか、おおよその見当はつけられるのだが。
 とにかく正宗は、木屋町通りを北上した。

『そんなに走ったら、それだけで怪しいのだがな。まぁこんなに走る奴もおらなんだから、追っかけられたとて簡単にまけるだろうが』

「どうせもう夜だし、誰も見てない」

 走るということがない時代、このように疾走する正宗など見たら化け物かと思われるかもしれない。
 が、今と違って夜になれば街中であろうと闇が落ちる。
 そこを凄いスピードで走り抜けても、誰も気付かない。

 もっとも正宗も周りが見えないので、なかなか危険なのだが。

 さすがに息が上がってきた頃、ようやく前方に蠢く一隊を見つけた。
 出て来た店の灯りで、だんだら模様がちらりと見えた。

「き、局長っ」

「おっ、大江ではないか」

 ただならぬ正宗の様子を敏感に嗅ぎ取り、近藤が大股で近付いてくる。

「何か掴んだか」

 こくこくと頷きながら、正宗は通りの先を指差した。
 少し先に、件の池田屋がある。
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