リアル☆タイムスリップ
 夢だというなら、そのほうが自然だ。
 が、夢とは思えない生々しさ。
 いまだにあの強烈な臭いが鼻の奥に残っているようだ。

 正宗はぽつぽつと、蛍丸に気を失ってからのことを話した。

『……ほおぉ~。随分面白い体験をしていたのじゃなぁ。わしもついて行きたかった』

 聞き終えて、蛍丸は感心したように言った。
 本当に、あの蛍丸とこの蛍丸は別物だったようだ。

『けどのぅ、言われてみれば、確かに寝ている間のおぬしには、魂が感じられなんだ』

 さらっと恐ろしいことを言う。

『魂が、時空を超えてどこぞに行っておったのかものぅ』

「いやいや、そうかも、と思ったら連れ戻してよ」

『無理じゃ。さすがのわしも、魂の行く先など突き止められん。そんなこと出来たら、ほれ、いろいろややこしくなりそうじゃろ』

 気に入ったあるじの魂を連れ戻したりしたら、寿命に影響する。
 人の生を弄ぶことも可能になるわけだ。

『しかしおぬし、そこまでわしと離れたくないわけか』

 不意に、にやりと蛍丸がいたずらっぽく笑みを浮かべた。

『夢の中でもがっつりと一緒におるし、おぬしはわしがいてくれて良かったと心底思ったわけじゃろ』

「そりゃ、あんなリアルな夢だとそう思うよ」

 いまだに信じられない。
 あれが本当に全て夢の中の出来事だったのだろうか。

 恐ろしい夢など見た後は、目覚めたときに疲れていることもある。
 だがこの疲れは、そんな生易しいものではない。

 最後に四条通りから木屋町通りを全速力で駆け抜けた。
 まさにその疲労が、この身体に残っているのだ。

 加えてあの血の臭い。
 思い出し、うえ、と正宗は胸を押さえた。
< 50 / 54 >

この作品をシェア

pagetop