リアル☆タイムスリップ
終章
次の日は昨日途中になっていた作業を再開し、依頼された箱の中身を改めた。
「戦の荷物の一部でしょうかねぇ」
「おそらく。ちょっと誰のものかまでは……わかりませんが」
ぱらぱらと目録を繰っていた正宗は、何度も最後のページを確かめた。
『蜥蜴丸』がないのだ。
刀がなくなっているだけならともかく、目録の文字まで消えている。
---確か俺が持ったままタイムスリップしたな。帰るときは持ってなかった。だからだろうか---
とはいえ、あれは夢の話。
タイムスリップなど、あるわけない。
……はずなのだが。
「あの、宮司さん」
正宗は一緒に作業している宮司に聞いてみることにした。
宮司だってあれを見ている。
「刀……ないですね」
何となく緊張しながら言うと、宮司は、ん、と並べた品々を見た。
「ああ、そういえば。戦の荷物やのにねぇ」
首を傾げて言う。
そして、ぽん、と手を叩いた。
「刀は刀持ちとかいたし、専用の袋もある。甲冑だってそうやし、こんなごっちゃには入れへんのやろ」
ははは、と笑う。
宮司の記憶には、蜥蜴丸自体が存在していない。
「宮司さん。昨日倒れてる間、夢とか見ました?」
「いやぁ、全然。自分は瞬きしただけのつもりやったのに、目を開けたら母屋の部屋にいてビビったわ」
宮司は正宗よりも先に目を覚ました。
特に何事もなかったらしい。
---刀身を見た者は不幸になる。宮司さんも刀身を見たはずだけど……。実際抜いたのは俺だからか? まじまじ見ないと何ともないのかな。刃紋に気を取られて気付かなかったけど、もしかしたら抜いてすぐに、宮司さんは気を失ったのかも。あんまりちゃんと見てないのかもな---
やはりどこか釈然としないまま、正宗は依頼された仕事をこなして、経堂を後にした。
「戦の荷物の一部でしょうかねぇ」
「おそらく。ちょっと誰のものかまでは……わかりませんが」
ぱらぱらと目録を繰っていた正宗は、何度も最後のページを確かめた。
『蜥蜴丸』がないのだ。
刀がなくなっているだけならともかく、目録の文字まで消えている。
---確か俺が持ったままタイムスリップしたな。帰るときは持ってなかった。だからだろうか---
とはいえ、あれは夢の話。
タイムスリップなど、あるわけない。
……はずなのだが。
「あの、宮司さん」
正宗は一緒に作業している宮司に聞いてみることにした。
宮司だってあれを見ている。
「刀……ないですね」
何となく緊張しながら言うと、宮司は、ん、と並べた品々を見た。
「ああ、そういえば。戦の荷物やのにねぇ」
首を傾げて言う。
そして、ぽん、と手を叩いた。
「刀は刀持ちとかいたし、専用の袋もある。甲冑だってそうやし、こんなごっちゃには入れへんのやろ」
ははは、と笑う。
宮司の記憶には、蜥蜴丸自体が存在していない。
「宮司さん。昨日倒れてる間、夢とか見ました?」
「いやぁ、全然。自分は瞬きしただけのつもりやったのに、目を開けたら母屋の部屋にいてビビったわ」
宮司は正宗よりも先に目を覚ました。
特に何事もなかったらしい。
---刀身を見た者は不幸になる。宮司さんも刀身を見たはずだけど……。実際抜いたのは俺だからか? まじまじ見ないと何ともないのかな。刃紋に気を取られて気付かなかったけど、もしかしたら抜いてすぐに、宮司さんは気を失ったのかも。あんまりちゃんと見てないのかもな---
やはりどこか釈然としないまま、正宗は依頼された仕事をこなして、経堂を後にした。