リアル☆タイムスリップ
『そりゃ、刀は斬ってなんぼだろ』

 さらりと言う。

『お前だって、手に負えない悪いモノは、わしで斬り裂いてきたであろ』

 稀にだが、見えざるモノの中にはシャレにならないモノもいる。
 どうあっても祓えないもので、且つそのままにしておくと人に害為す可能性のあるモノについては、蛍丸で斬ってきた。

 が、そのようなヤバいもの、そうそうあるものではない。
 実際蛍丸を使ったことも、数えるほどだ。

『勿体ない話よのぅ。わしほどの業物、飾っておくだけなどあり得ぬ。おぬしもそう思うであろ?』

「そんなの経験ないからわからん」

『まぁ、今の奴らには到底無理な話よなぁ』

「殺人事件は、それこそ頻繁に起こってるけどね」

『馬鹿もん。今のは単なる犯罪じゃろ。昔は違う。命のやり取りがもっと身近にあるが故に、皆命を大事にする。誰ぞを斬るとなっても、それは命懸け。こちらも斬られること覚悟の上よ。人を斬って捕まれば、今とは比べようもない土壇場が待っている。犯罪を犯すにしても、今の奴らとは心構えが違うのよ』

 確かに、と正宗は社務所を出て本殿へと向かった。
 出向いたからにはお参りをしておかないと。

 柏手を打つと、す、と心が軽くなる。
 柏手には場を浄化する作用があるのだ。

『どうよ。気分は良くなったか?』

「ああ、まぁね」

 ねっとりと身体にまとわりついていた嫌な空気が、少し晴れたようだ。
 本殿のお参りを済ませると、脇の小さな参道を通って経堂に行った。

 そこで待っていたここの宮司と、収められている資料の整理を行うのだ。
 古文の読める正宗は、こういう手伝いに重宝される。
< 6 / 54 >

この作品をシェア

pagetop