リアル☆タイムスリップ
---うぉ---

 一瞬くらりと眩暈がし、正宗はさりげなく木箱の縁に手をかけた。
 京に来てから続いていた体調不良が、まだ治っていないのか。

『おお、これはなかなかな値打ちものじゃのぅ』

 ふよふよと浮きながら、蛍丸が箱の上から中を覗き込んで言う。
 正宗はちらりと顔を上げ、そうなのか? と目で問うてみた。
 当然ながら、他の者には蛍丸の姿など見えないからだ。

『うむ。なかなか興味深い。ほれ、その一番底。それ、わしの仲間ぞ』

 蛍丸に言われ、正宗は箱の中を覗き込んだ。
 確かに下のほうに、何か一際気になるモノがある。

 が、一応これは全部それなりのモノだし、上に乗っているものを押しのけてはマズかろう。
 とりあえず、上から順に出していく。

「えーと、この辺は茶器の類ですかね。楽茶碗、青織部……。へぇ、結構いいものですね」

 目録を見ながら茶器を箱から出していくものの、茶碗的な器だから、これを指すのだろう、ということがわかるだけだ。
 正宗は古文は読めるが鑑定士ではない。
 適当に評価しながら、正宗は例のブツの上のものをのけて行った。

「で、これが……」

 ごちゃごちゃと入っていた茶碗をのけ、やっと目的のものに手を伸ばす。

「刀ですな」

「そのようですね」

 錦の刀袋に入っているが、形状でわかる。
 何となく、二人とも手を出すのが憚られ、しばし箱の底に鎮座する袋を見つめた。
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