息を止めたくらいでは
池杉は夜11時の門限を破ったことがある
池杉の母親は割と厳しくて
池杉へのあたりもつよい
池杉曰く、「自分は生まれてきてほしくなかった子供」らしい。
それが 母親の厳しさにつながるとは思えないのは 俺の中だけの秘密だった。
門限を破ると、家に当分入らせてもらえないらしい。
父親はおらず、弟と3人暮らし。
弟は助けてくれるはずもなく、その日は友達と長電話して時を過ごしたらしい。
四月とか、九月とか、ちょうどいい気候の時期なら痛くもかゆくもないだろうけれど
その時期は二月、真冬だった。
足の指先が動かなくなるほど寒いその日は、朝も夜も氷点下下回る極寒の日だった。
タイミングが悪かった。自業自得。
以来、池杉はどの時期にかかわらず、門限を破ることを嫌がった。
「あ、売れた」
「何が」
「バッグ」
「ねえ知ってた。メルカリいまお金が売られてるらしいよ。割高で」
「見たそれリアルなやつ。」
メルカリの売上金が減ってたところにSOLDの文字はありがたい。