甘え下手を治すには溺愛を
8.裕:浩大と
「仁木。明日来れねーわ。
また別の日でいいか?」
浩大の申し出に俺は別にいいんだけど…千紗に会うのかと一応さぐってみる。
「あぁ。別にいいけど。女と会うのか?」
「まぁな。とびきり可愛い子。」
…千紗じゃねぇな。
こいつ、んっとにろくでもねー。
「じゃ、またな。」
浩大は帰っていった。
関係ないのに、なんとなくムシャクシャして、携帯を出す。
スクロールして『千紗』と表示された連絡先を選択した。
電話の向こう側で少し怯えた声が聞こえる。
「……もしもし?」
嫌なら出なきゃいいのに。
「今、大丈夫?」
「うん。もう仕事終わったところ…。」
「そっか。
こっちも終わるから、今から会えない?」
「え!?だって約束は土曜…。」
律儀な奴。
その約束は守るつもりだったんだ。
こんなどこのどいつかも分からないような怪しい奴だぜ。
「いいじゃん。会いたい。」
「…ッ。」
千紗のことだ。
電話口で真っ赤になっているのが想像できる。
その顔が見たくなって電話で言ってしまったことを若干後悔した。
「来てくれなくても昨日のカフェで待ってる。
俺もあと少ししたら行くから1時間後に。」
「え?…ちょっと!」
まだ何か言っている電話を強引に切るとカフェに向かった。