甘え下手を治すには溺愛を
12.裕:調理してやる
「ねぇ。男を部屋に入れるってどういうことか分かってる?」
「!!」
もういい加減、我慢できない。
ちょっと分からせてやった方がいいよな。
「さっき俺のことお母さんみたいって言ったけど、男だってこと確認してみる?」
顔を覗き込んでキスでもしてやろうって思っていた裕一は千紗の言葉に動きを止める。
「だって…。ゆ…あなたは大丈夫って思ったから。」
「なんだよ。それ。」
その判断が間違ってるから、こういうことになるんだろうが。
「だって…。悪い人じゃないもん。」
チッ。なんだよ。それ。
千紗の頭をグリグリして「悪い奴に決まってんだろ」って部屋に勝手に上がった。
震えてるくせに言う言葉がそれってどうかしてる。
「勝手にキッチン使うからな。」
それだけ言って夕食の準備に取りかかった。
「あ、わ、私もやるよ。」
「だ・か・ら!甘やかされてろって!
だいたい『裕』って言いかけて『あなた』ってなんだよ。
新婚ごっこか?」
ちょっとふざけた事を言えば真っ赤になる。
かと思えば…。千紗って…よく分かんねー。
「だって名前で呼ぶなんて…恥ずかしい。」
はいはい。恥ずかしいですよねー。
お子様ですねー。
「ほら。練習してみろよ。」
「う…。………ゆ…裕?」
疑問形で呼ばれた名前に何故だかドキッとした。
千紗の方を見てみれば俯いて照れた顔をしていた。