甘え下手を治すには溺愛を
2.裕:始まり

「仁木!お前こっち…。げ。千紗からメールだ。」

 浩大はスマホを覗いておちゃらけてしかめっ面を見せる。

 俺は仁木 裕一(にき ゆういち)、
目の前にいるのが綾部 浩大(あやべ こうた)

「あぁ。前に言ってた彼女?」

「そ。今日、会う日だって覚えてる?って。
 行かなくても文句も言わねぇけど、なんつーかつまんない女。」

 ひどい言われよう…。
 ま、俺には関係なんだけど。

「行ってやればいいだろ?待ち合わせ場所遠いのか?」

「いや。駅前の『Honey』ってカフェ。
 でも面倒くせーな。行かなくてもいっか。」

 ひでー奴。
 千紗って子もいい加減、気づけばいいのに。

「じゃ、俺、帰るわ。」

「あぁ。またな。」

 帰るのに行ってやらないのかよ。
 ま、浩大はきっと別の女のとこに行くんだろうな。
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