甘え下手を治すには溺愛を
28.裕:握る手
「裕……ど、どうしたの?」
戸惑っている千紗も可愛い。
ほんの数日会ってないだけなのに、ずいぶん会ってなかった気がしてしまう。
「会いたいなんて千紗が言ったら来ないわけにいかないだろ?」
胸いっぱいに千紗の風呂上がりのいい匂いをためておく。
離したくないけど、でも………。
「ほら。手、繋ごう?」
千紗を腕の中から離して、手を差し出すと、コクリと頷いた千紗が俺の手の上に小さな手を重ねた。
それをそっと握る。
「抱きしめてても話せるようになったみたいだし、ずいぶん成長してるよな。」
真っ赤な顔して首を振る千紗。
そっと頬に唇を寄せれば目を見開いた千紗が頬に手を当てて、俺を見上げた。
「可愛い。千紗。
俺、千紗のこと………。」
ブーッブーッと携帯が音を立てた。
騒がしいのは千紗の方の携帯だった。
手を放してやると携帯を確認している。
「え………。浩大…。」
な………。
愕然として視線を落とせば、見るつもりがなくても携帯の画面が見えてしまった。
『久々に千紗に会いたいな。
明日は空いてる?』
千紗が困った顔をこちらに向けてきて胸がギュッと痛んだ。