甘え下手を治すには溺愛を
32.裕:ご機嫌な浩大
夜、ご機嫌な浩大が家に来てイライラを隠せない。
それでも浩大は気にしていない。
浩大は良くも悪くもそういう奴だ。
「今日、遅かったな。
なんか……いいこと…あったのか?」
聞かなきゃいいのに、口についた言葉に嫌気がさす。
「あぁ。わりーわりー。
さっきまで女といてな。
まだ帰らないでって、ねだるからよー。」
心の中に苦々しい何かが広がっていく。
浩大が無造作にかきあげた髪からシャンプーの香りがして、ドクンと胸が波打った。
良かったんだ。これで。
最初からそれが目的で、その為の甘え講習だったんだから。
その甲斐あって千紗も甘えられたんだ。
「泊まりのつもりだったんだけどよー。
アテが外れてな。
ま、おかげでいい思いできたんだけど。」
ご機嫌な浩大の言葉なんて、もう聞きたくもなくて耳に蓋をしておきたい。
「んだよ。
また俺との予定を変更するつもりかよ。」
「まぁまぁ。
ちゃんと来てんだから怒るなよ。」
悪びれないのもいつも通り。
分かってる。浩大はこういう奴だ。
もういい。もう忘れよう。