甘え下手を治すには溺愛を
36.裕:帰らないで
「ごめん。裕。
部屋にあげるのはダメだったんだね。
ごめん。
でもお願い帰らないで。」
あんなことされといて、何を寝ぼけたことを言ってるんだよ。
つかまれた手を振り払おうとしても、千紗は離さなかった。
「離せよ。
同じことされたいのかよ。
だいたい震えてるくせに抵抗しろよ。」
千紗は震えていた。
たぶん押し倒したくらいからずっと。
甘えたりできない奴が襲われて抵抗なんてできないよな。
俺、最低だ。
でもそれでいい。
最低で、嫌われればもう会わなくて済む。
会いたいなんて言われて惑わされなくて済むんだ。
「裕が帰っちゃう方がもっとヤダ。
帰らないで………。」
ギューッと心臓を鷲掴みされたように苦しくなる。
帰らないでなんて、浩大にも同じこと言ったんだろ?
「もう浩大にも甘えられたなら俺は必要ないだろ?
それとも何か?
そっちの講習もしてくれとでも………。」
手をつかんでいた千紗がいつの間にか起き上がっていて、裕にしがみつくように抱きついた。
な………だからやめろって!!!!!
「私、浩大に甘えれたことないよ?」
「は?」
何、言って………。
「裕だけだよ。こんなに……。」
「だってさっきまで浩大とここで……。」
言いかけて吐き気がする。
ここで、浩大と、ここで………。
「え?
………私、部屋にあげたの裕が初めてだよ?」
「は?」