彼がメガネを外したら…。



この展開に、絵里花も胸のざわめきを禁じ得ない。これまで幾度となく男性から言い寄られたことのある絵里花にとって、こんな重石のようなタイプの男性は、軽いくせに粘着質で一番苦手だった。

何よりも、こんなにも愛しく想う史明から、他の男性を紹介されるほど切ないものはない。


「そういうことには、俺は関知しない。第一、望月さんにはもうすでに、他に彼氏がいるかもしれないだろう」


そんな史明の言葉を聞いて、絵里花は違った意味で焦った。


「彼氏は今はいません。もう一年くらい前にフラれてしまって」


史明に変な誤解をしてもらいたくない。その一心で絵里花がした説明は、却って重石を『受け入れてもいい』というような意思表示となってしまった。


「それじゃ、お互い、よろしくやればいい」


史明は憮然とそう言い放つと、もう絵里花とは視線を合わせようとはしなかった。

絵里花の胸が不安に揺れて、痛みに侵される。史明は、絵里花が他の男と『よろしくやる』ことを何とも思ってくれないのだろうか……。


「お話し中ごめんなさい。岩城くん、ちょっといい?」


ちょうどそこへ、史明に話しかけてきたのは、やはり朝に会っていた山川だった。


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