彼がメガネを外したら…。
それに、古庄家文書が文化財ともなれば、それを発見した史明にとっても、名誉なことに違いない。
自分が話をすることで、少しでも史明の助けになれるかも……、いや、ここは敢えて自分が、アピール下手な史明の代わりに、その貴重さを強調して訴えておかなければと、絵里花は思った。
「へえ?面白そうですね。岩城とは、また違った話が聞けそうだ」
除け者にされたくない重石が、そう言って二人の会話に入ってこようとする。けれども、濱田がそれをやんわりと牽制した。
「重石くん。そう言えば、東大の児玉先生、君の恩師だろう?しばらく君と会ってないって寂しがってたぞ。今日は来てたから、挨拶くらいしといた方がいいんじゃないかな?」
「えっ…!」
重石もそれを聞いてしまっては、恩師への挨拶をなおざりにはできなくなる。
「…そうだ、望月さん。この後、岩城や山川や、大学の同級で二次会をしようって言ってるんだ。ぜひ君も、岩城と一緒に来たらいいよ。それじゃ、また後で」
重石はそう言い残すと、そそくさと絵里花と濱田の前から姿を消した。
思い通りに事が運んだ濱田は、絵里花へと向き直り、その笑みのにこやかさをさらに濃くした。