彼がメガネを外したら…。
絵里花もなんとか自分の役目は果たせたようだと、ホッとして息を抜いた。
「それはそうと……。君は君で、とても熱心な方みたいですね。本来の専門も、やっぱり戦国期なんですか?」
濱田から新しい話題を振られて、絵里花は恥ずかしそうに固かった表情を緩めた。
「私は……、大学では近世の文書を読んでたんですけど、そんな『専門』って言うほど取り組んでたわけでもないんです」
「それじゃ、君がそんなに一生懸命なのは、岩城くんに恋をしているからでしょうか?」
「……ぇえっ?!」
いともあっさりと濱田に本心を見破られて、絵里花はその綺麗な顔を真っ赤に塗り替えた。途端に暑さを感じ始めて、体の中で火が着いたみたいだ。
「岩城くんが発表をしているときの君のテキパキとした動きや、岩城くんへ向ける眼差しを見ていたら、そりゃ気がつきますよ」
濱田は柔らかい笑顔の目をさらに細めて、絵里花を見つめた。絵里花は真実を突かれて、返答に困ってしまう。
「岩城くんのことが好きなら、彼のこと、いろいろと知りたいでしょう?私が知ってる大学時代の彼のこと、教えてあげましょうか?」
「大学時代の岩城さん……?」