彼がメガネを外したら…。



もちろん知りたいに決まっている。
彼のマニアックな習性は、その頃から変わらないとは思ったけれど、それにまつわるいろんなエピソードを知りたいと思った。もっと史明のことを知って、彼への理解をもっと深めたいと思った。
……そして、絵里花のいちばん気になること……。


「大学時代の岩城さんには、彼女とか、親しくしていた女友達とか……、いましたか?」


気づくと、絵里花の口が勝手にそう動いていた。
史明に釣られて、絵里花がその話題に興味を持つと、濱田は意味ありげな笑いを含ませて答えた。


「もともと女性の少ない学科だし、岩城くんはあの性格であの風貌だから、『彼女』はおろかモテることもなかったですよ。……だけど、今日も来てた山川さん。彼女とは学生時代から親しかったみたいですね」


大学時代には、史明にだって女友達がいることも当然あり得ることだ。
史明の方は、純然と山川のことを友達と思っているだろうけれど、山川の方は、史明のことをどう思ってるんだろう……?

すると濱田は、絵里花のそんな思考を読んでいるように続けた。


「山川さんは、もしかして岩城くんに気があったのかな?今回も国立古文書館へ推薦したくらいだから、この機会に友人関係から脱出したいのかもしれませんね」


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