彼がメガネを外したら…。
「……えっ?!」
絵里花は、自分が置かれている状況がまだ掴みきれず、戸惑いの声をあげる。朦朧とする頭を押さえながらベッドの上に体を起こすと、
「あっ!!」
タイトスカートがずり上がって、ストッキングを穿いた足が露わになっている。絵里花は慌てて、裾を掴んで引っ張り下ろした。
「学会の懇親会で、こんなに泥酔するなんて、君は案外非常識なんだな」
史明の辛辣な言葉がさらに降りかかってきて、ようやく絵里花は何が起こっていたのか思い出す。どうやら、酔いつぶれた自分を史明がホテルの部屋まで運んでくれたらしい……。
史明の指摘はもっともだと思った。絵里花だって、こんなふうに泥酔することは〝恥ずかしいこと〟だと思い、いつもなら決してその洗練された振る舞いを乱すことはなかった。
「いつもはお酒を飲んでも、こんなふうに酔ったりしないんです……。……だけど、今日は……、濱田さんとラウンジに行って、カクテルを一杯飲んだあたりから急におかしくなって……」
こんな言い分は、絵里花自身も愚かな弁解だと分かっている。こんなことを言って、史明の理解を得ようとしている自分が、情けなくてたまらなかった。
すると、絵里花のそんな言い訳を聞いて、史明の表情があからさまに険しくなった。