彼がメガネを外したら…。
「……あの!濱田のヤツ……!!」
歯ぎしりするその歯の隙間から悪態が突いて出て、史明はキレイに整えられていた髪の毛を掻きむしった。
そんな史明の変化に驚いて、絵里花はもっと体をすくませる。
「きっと君の隙をついて、君のカクテルの中に薬か何か……意識を失わせるものを入れたんだ!」
「まさか……!」
史明の推理に、絵里花は愕然として言葉を失った。それが本当なら、それこそ犯罪だ。
「あの人はそういう人なんだよ。飲み会に乗じて女性を口説いて、関係を持つんだ。そうやって薬物を使ってるとは、さすがに思わなかったけど……。知ってる女性の何人かは、あの人の餌食になってる。だけど、あの人は力を持ってるから、みんな泣き寝入りだ」
史明の言葉を聞きながら、絵里花は恐怖で凍りついた。あの濱田の紳士的な態度、柔和な表情の裏に、そんな卑劣な魂胆が隠されていたなんて……。
あのまま史明が来てくれなかったら、今頃絵里花は意識を失ったまま、濱田の部屋のベッドの上で服を脱がされていたに違いない。
「どうしてあんなヤツに、のこのこ付いて行ったりするんだ?そんなにアイツは、いい男だったのか?!」
史明に軽薄な女のように言われて、絵里花は心外のあまり少しムキになった。