彼がメガネを外したら…。
「違います!いい男とか、そんなこと関係ありません!濱田さんに『古庄家文書のことを聞きたい』って言われたんです。もしかすると国の重文くらいに指定できるかもって……。だから私、ちゃんと説明して、古庄家文書の素晴らしさを知ってもらわなきゃ……って思って……」
濱田と話に行ったのは、古庄家文書の価値を確固たるものにするため、延いては……、それを見つけた史明の名誉のためだった。
「古庄家文書がどれだけ重要なものかは、研究者ならば誰だって認識できることで、君がわざわざ説明したりアピールする必要なんてない。それに、この程度の文書はそう珍しいものでもないし、国の重文なんかにはならないよ。君はうまいこと、濱田の口車に乗せられただけだ」
史明からそんなふうに切り捨てられてしまうと、絵里花は自分のことが本当に情けなくて、消え入りたくなった。
自分に知識や常識がなかったがために、意味のない行動をして、それが却って史明の手を煩わせて、迷惑をかけてしまったなんて……。
「とにかく、君は自分が人並み外れて綺麗な女性だということをもう少し自覚して、警戒するべきだ。初めて会う男に隙を見せて、こんなに正体をなくしてしまって……、それこそ『襲ってください』って言ってやってるようなもんだ」