彼がメガネを外したら…。
史明のやるせない表情を見て、絵里花の胸がキュンと切なく痛んだ。自分の能力は、とうてい史明の足元にも及ばないけれど、どうにかしてこの史明の力になりたいと思った。
「……そうだ。岩城さん。この史料……」
と言いながら、絵里花は自分の作った目録をチェックして、それから整理し終えて納められている古文書をいくつかテーブルの上まで持ってきた。
「この前、岩城さんが出張だった日に整理したものなんですけど……、これ、戦国時代の楢崎氏のものじゃないですか?」
「……え!?」
史明が目の色を変えて、その古文書を手にとって確かめてみる。そして、それを走り読みし、そこに書いてあることが明らかになるにつれ、史明は顔色まで変えた。
「望月さん!これは、とんでもない大発見だよ!戦国でもこの時期の楢崎氏の古文書はほとんど残ってないんだ。今すぐ、館長にも報告して、マスコミにも……」
と、史明が興奮しながらそう言いかけたところで、
「ダメです!マスコミなんかに発表しちゃ!館長や副館長はもちろん、誰にも言っちゃダメです!!」
と、絵里花が強い口調で史明を制止した。
史明はその表情の上に訝しさを加えて、絵里花を凝視した。