彼がメガネを外したら…。
そこへ史明が行けることは、絵里花だって望んでいたことだった。物怖じしていた彼の背中を、力強く押したのは、誰でもない絵里花だった。
後悔しているわけではない。一緒に研究を進めていく中で、史明のいろんな面を知ることができた。そして、もっともっと史明のことが好きになった……。
でもこの感情は、どんなに募っても、行き場がない。
どんなに泣いても泣いても、胸は押しつぶされたままで、その中で渦巻いている感情は整理しきれない。絵里花は混沌とした苦しみの海の中で、もがき続ける。
この想いに囚われている限り、この苦しみからは抜け出せない。この苦しみが耐えられないのならば……、
――もう……、岩城さんのことを好きでいるのは、やめなきゃ……。
暗闇の中、泣き腫らした目を開けて、絵里花はそう決心した。