彼がメガネを外したら…。
気持ちを隠したまま絵里花の側にいる選択をしていた史明は、気持ちを知られてしまった以上、今まで通りに一緒に仕事はできないと思ったのだろうか。
「もうこれで、やっぱり俺はここにいられなくなったな……」
史明が寂しそうに呟き、手にあったメガネを再びかけようとした——。その瞬間、その背中に強い衝撃が走った。
「……!?」
絵里花が史明へ駆け寄り、その背中から抱きついていた。突然の絵里花の行為に驚いて、今度は史明の方が動けなくなる。
絵里花の方も、自分でも思いもよらなかった自分の行動に戸惑っていた。
――引き止めちゃ、ダメ……!!
それは分かっているのに、絵里花は自分を止められなかった。史明の背中に顔を埋め、両腕にギュウッと力を込めて、史明を抱きしめた。
史明の想いを知って、今まで押し止めていた絵里花の本当の気持ちが、溢れだしてくる。
「岩城さんが、……好きです!」
絵里花は、史明の背中に顔をうずめて言葉を絞り出した。止められない想いと一緒に、涙がまた溢れだしてくる。
「もう……、ずっとずっと前から……好きでした」
その言葉の響きと、体に回される絵里花の腕の力の強さに、史明も絵里花の想いの強さを感じ取る。