彼がメガネを外したら…。
早速、史明は明治時代の地図…といっても、筆で描かれた近世の仕様の古地図のコピーを古庄さんに広げて見せた。そこに書かれている『城山』という場所が、どこか特定したいようだ。
「……うーん。どこだろうね。この辺は山ばかりだから……」
と、古庄さんも心当たりがなく、首をひねるばかり。
「ここは、楢崎氏の重臣だった古庄家が、代々500年以上に亘って治めていた土地です。この近くに城の一つや二つあってもおかしくないんですが……。なんでもいいんです。思い当たることはありませんか……?」
この広い山林をやみくもに探し回るわけにもいかず、史明も手掛かりを求めて必死に食い下がる。
「……そうは言ってもなぁ……」
古庄さんも途方に暮れて、困り顔になる。と、そこへ、一台の軽トラックがエンジンをふかしながら茅葺の屋敷門を入ってきて、庭の真ん中で止まった。
「あれ?お客さん?」
そう言いながら軽トラから降りてきた若者を一目見て、絵里花は息を呑んで固まってしまった。イケメンと形容するのも憚られるような、神々しくて眩しいほどの人物――。
「娘の、晶です」
古庄さんの紹介を聞いて、絵里花はさらに開いた口が塞がらなくなる。目の前にいる若者が〝娘〟だなんて、信じたくないほどだった。