彼がメガネを外したら…。
二人の視線が絡み合う理由を見つけ出せて、絵里花もホッとしたような声を出す。
「あの、大学って……。岩城さん、どこの大学の出身でしたっけ?」
絵里花のその問いに、ちょっと面倒くさそうに史明が答える。
「東大だ」
「トーダイ……って?」
「東大って、東京大学以外で、そう言われる大学があるのか?」
「えっ……!!」
初めて知らされたこの事実に、絵里花はまた息を呑んで固まった。
ネームバリューに惑わされてしまうのは、凡人の悲しい性だけど。光り輝くような晶のハロー効果かもしれないが、突然史明にも後光が射しているように見えた。
――でも、どうりで、岩城さんは傑出しているわけだ……。
それほど、史明の歴史に関する知識量と思考力は、常識を超越していた。それは、ずっとそばにいて研究を手伝っている絵里花が一番分かっていることだった。
それでも、史明は自分の経歴をひけらかしたり鼻にかけたりすることなく、一研究員として地道に真摯に、自分のやるべきことに打ち込んでいる……。そんな史明に、絵里花は改めて惚れ直した。
大学の同窓生といっても、これという共通点もなく、いかんせん相手が史明だから、当然会話は盛り上がらない。
「晶、この地図の『城山』って、どこの山のことか分かるか?」
そこで、古庄さんが話をもとに戻してくれる。