彼がメガネを外したら…。
晶も地図を囲む輪の中に入って、それを覗き込むと、すぐに「ああ!」と声を上げた。
「これはタラの木山のことじゃないのか?」
「……ん?タラの木山かな?ちょっと位置が違うように思うけど」
晶の言葉に、古庄さんが首をかしげる。
「この辺は山ばかりで分かりにくいけど、この位置の山らしい山は、そこしかないよ。タラの木山というのは、タラの芽がたくさん採れるからそう言われてるんだけど、……たしか、本当の名前は磐牟礼山って言ってたらしいよ」
〝磐牟礼〟そのワードが出てきた途端、史明の眼光が鋭くなった(ように見えた)。
「磐牟礼山、それはどこにあるんですか?」
史明は必死な態度になって、今度は国土地理院の詳細な地図を広げて、その位置を教えてもらう。
絵里花も目の前で、史明の〝読み〟通りに物事が展開していくのを、ドキドキと胸を高鳴らせながら見守った。
「なんでまた、こんな山のことを調べてるんだ?『城山』って言うことは、昔は城があったとか?」
「その通りなんです!!」
そして、絵里花は興奮するあまり、史明よりも先に相づちを打った。そんな絵里花のリアクションを、晶は〝かわいい〟と思ったらしく、極上の笑みを返してくれた。
「そう言われてみれば、その山で石垣らしきものを見たことがあるな」
晶のその言葉は、決定打だった。