彼がメガネを外したら…。
「やったー!!岩城さん、よかったですね!!これはもう、見つかったのも同然ですよ!」
絵里花が思わず跳び上がって、その喜びを表現する。史明は努めて冷静に、逸る心を抑えながら、深々と晶に頭を下げた。
「お忙しいところ申し訳ありませんが、その場所まで連れて行ってください」
しかし、晶は表情を曇らせる。
「連れて行ってあげたいところだけど、実は、この後は自然農の研究会に行く予定にしてて……。近くまででよかったら……」
ということで、目的地の近くまで晶の先導する軽トラに付いて、絵里花の車で向かうことになった。
周りに人家がなくなり、山の中に分け入っていくにつれて、道はどんどん狭くなっていく。運転するのに必死な絵里花。史明も助手席で息を潜めるように押し黙って、前を行く晶の軽トラを見つめてると思いきや……、
「……あっ!!」
と、突然大きな声を出した。
不意打ちを食らった絵里花の心臓が、ドキン!!と大きく跳ね上がった。
「どうかしましたか?」
「あー、しまった!!磐牟礼山の土地所有者に、調査の了解を取ってない!!」
史明は天を仰いで頭を抱えた。
「……取らなきゃいけないものなんですか?」
土地所有者といっても、どの場所かさっきまで分からなかったのだから、事前に断っておくことなど不可能だった。