彼がメガネを外したら…。
デート…のようなもの
「さあ、早速調査に向かうぞ。ぐずぐずしていると、今日中に見つけ出せないかもしれない。……それとも……」
史明は車の中からカメラなどを持ち出しながら、言葉を途切れさせた。
「君はヘビが嫌なら、ここで待ってるか?」
「……とんでもありません!一緒に行くに決まってます!!」
これは、史明なりの気遣いなのかもしれないが、絵里花は即座に否定した。
せっかく〝二人っきり〟でいられる(収蔵庫の中でも二人っきりだけど)貴重な機会なのに、独りで待ちぼうけなんて本当にとんでもなかった。
『また、ヘビがいたって、岩城くんに抱きつけるからいいじゃない』
先ほどの晶の言葉を思い出して、絵里花はほくそ笑んだ。
先ほど、史明に抱きついたときの感覚が、絵里花の中でくすぶっている。見た目よりも逞しい骨格。思いがけないほどの温かさ……。
――……だって、これは〝デート〟のようなもの……だもん。
絵里花は、これから二人で行動を共にできることを機に、二人の仲が進展することに胸を膨らませていた。
そんな絵里花の思考に水を差すように、史明がぽつりと言葉をこぼす。
「ヘビだけじゃなくて、ヤマビルなんかもいるかもな……」
「ヤマビル……って?」
車の中からリュックサックを持ち出して、背負いながら絵里花が首をかしげる。