彼がメガネを外したら…。
そんな史明を見つめていると、ふと絵里花の視界に、木々の幹でもない地面を敷き詰める落ち葉でもないものが入ってきた。
「……岩城さん。……あれ、なんですかね?」
「……ん?」
史明も振り返って、絵里花の指差す方を確かめる。
落ち葉の斜面の上に、何か丸い石のようなものが並んでいる。史明がハッと息を呑んで、すぐさま斜面を駆け上がっていく。
絵里花もそれに付いて行こうとしたが、落ち葉の降り積もった地面は思いのほかに柔らかく、足を取られて上手く上っていけなかった。
「い……、岩城さん。置いて行かないでください~」
絵里花は斜面に生えている杉の木につかまりながら、覚束ない足取りで必死に史明に追いつこうとした。すると、斜面の上から史明の舌打ちが聞こえてきた。
「……この!えせ山ガールめ!!」
史明は半分滑るように斜面を駆け下りて絵里花のもとまで来ると、その手を取って、再び上り始める。
「……!!」
絵里花の息が止まり、全神経は握られている右手に集中する。
「ええい、くそう!やっぱり君は連れてくるんじゃなかった」
なんて史明から小言を言われても、絵里花の耳には入っていなかった。