彼がメガネを外したら…。



――やっぱり、これは。〝デート〟のようなもの……!!


史明の大きな手が、絵里花の手を包み込んでいる……。
胸が高鳴り、天にも昇るような気持ちで、絵里花は一歩一歩斜面を登った。


斜面を上り切ると、そこは切り立った崖の根元になっていた。


「あ……ここは歩きやすい」


地面が固くなり、立っているのが容易くなったところで、パッと史明の手が離される。ガッカリする絵里花の表情の変化に気づくことなく、史明は崖の付け根に並んでいる石造物を確認し始めた。


「これが、古庄さんの言ってた〝石垣らしきもの〟ですか?」


道から見たら左手の斜面の上の崖の下……。晶の言っていたものとは符合する。しかし、史明はジッと観察するばかりで、絵里花の言葉に応えなかった。絵里花も一緒になって、ところどころ苔むしたそれを観察する。


少し間をおいて、史明が口を開いた。


「……これは、石垣じゃない。五輪塔だ」


「ええっ!?これが塔なんですか?」


絵里花が驚いて、問い返す。一口に〝塔〟といっても、先ほど見た背丈ほどもある宝篋印塔とは全く違い、史明が〝五輪塔〟と言ったこれは30cmほどのほんの小さな石の塊だった。


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