彼がメガネを外したら…。
「よく見てみると、一つひとつが四角と球と三角が重なった形をしているだろう?一つの石から作るこんな五輪塔は、ずいぶん古いよ。きっとこれも鎌倉期くらいのものだろう」
「それじゃ、これは石垣じゃない……って。こんなにたくさん連なっているのに……」
絵里花の言った通り、小さな五輪塔が崖の付け根にびっしりと並べられていて、見ようによっては石垣のように見えなくもない。
視界の向こうの方では半分土に埋まっているそれらを見ながら、史明が考察する。
「きっとこの五輪塔は墓石だな。この斜面一面が、共同墓地だったんだ。きっと掘ったら、たくさん出てくる」
「墓地……ですか?」
「君が今踏んづけてる丸い石も、墓石のてっぺんの部分だろうな。きっと無数に埋まってる」
「……ええっ!?」
絵里花は思わず跳び上がった。どうりで、ここは地面が固くて足場が安定していたわけだ。
動揺する絵里花だったが、史明は冷静に並んでいる五輪塔を眺めているばかり。その史明の表情が深刻になっていくのを、絵里花は心配そうに見守った。
しばらくして、史明がため息をつく。
「……もう帰ろう……」
そう言いながら、斜面を下り始める。絵里花はその後ろ姿を見て、開いた口が塞がらなくなった。