彼がメガネを外したら…。
「……とにかく。帰るんなら、岩城さん一人で帰ってください。私は絶対に、ここにお城があったっていう証拠を見つけて帰りますから!」
絵里花はそう宣言すると、覚束ない足取りながらも大股で斜面を歩いて、史明の横をすり抜けていった。
もとの道に戻って、どんどん先に進んでいく絵里花を、史明も大股で追いかけた。
「そうやって、やみくもに歩き回っても見つかりっこない」
今度は史明が絵里花の背中に向かって、言葉をかける。
「放っておいてください。岩城さんは帰るんでしょう?」
「さすがに、こんなところに君一人、置いて帰るわけにもいかないだろう?それに……」
と言いかけて、史明は口をつぐんだ。絵里花の車でここまで来ているので、史明一人で帰れるわけがなかった。
そんな史明に振り返って、絵里花は少し反省する。そして、先ほどまでと同じように、前を行く史明の後に付いて歩き始めた。
お互い無言のままで歩いて行くうちに、絵里花はなんとなく気がついた。どうやら史明は、やみくもに歩き回ってはいないらしい。
「どこに向かって行ってるんですか?岩城さんには、何か心当たりがあるんですか?」
前を歩く史明に問いかけてみる。すると、頭上の木々が途切れ、見晴らしのいい明るい場所まで出てきて、史明は先ほども広げていた地図を見せてくれた。