彼がメガネを外したら…。
「そうだな。見晴らしのいい南側の方には、何かあるかもしれない」
気を取り直して、再び歩き始める。
しばらくすると、岩場の多い山頂付近に差し掛かり、地勢を読んでいた史明の予想通り、見晴らしのいい場所へと出た。
「ここは……!私だったら、絶対ここにお城を建てます!!」
その場所を見た途端、絵里花が興奮気味に言った。
史明は呆れたような顔をして、なにも応えなかった。でもここは、山の上なのに平地で、四方がよく見渡せて、城を作るにはうってつけの場所だった。
なんだか〝何か〟が見つけられそうな期待を胸に、二人でその平らな土地を、下草を踏みしめながら丹念に調べて回る。
……だが、小一時間ほどそこで「何かないか」と探してみても、なにも見つけられなかった。
期待感が大きかっただけに、さすがの絵里花も消沈してしまう。史明の様子を窺ってみると、憂いを含んだ表情で唇を噛んでいた。
――……ハッ!!
絵里花は焦って、アレコレと思いをめぐらせた。
「……い、岩城さん。ちょっと休憩しましょう。私、軽食を持ってきたんです」
と言いながら、絵里花は背負っていたリュックサックを下ろし、その中からレジャーシートを取り出すと、それを踏み敷かれた草の上に広げた。