彼がメガネを外したら…。
この瞬間に、史明のだらしない身なりも言いようのない異臭も辛辣な物言いも、絵里花の中からすべて流れ去っていく。
階下の研究室にいるときは、各研究員のブースはパーテーションで区切られているので、ほとんど史明の姿を見ることなんてなかった。
こんなに近くで二人きりで仕事をすることができたからこそ、知ることができた絵里花だけの〝秘密〟。
このハンサムな史明に一目惚れしたというよりか、このあまりのギャップに、絵里花はヤラれてしまった。
初めて史明の素顔を見たときから、彼のことしか考えられなくなった。彼の素顔だけでなく、彼のどんな仕草にもときめくようになり……、
――……これは、恋だ。
と、自覚するに至った。