彼がメガネを外したら…。
ましてや、今から夜が迫ってくる。それを改めて認識して、絵里花は途端に怖くなった。
その時、さっき絵里花が気がついていた〝窪みのようなもの〟を、再び発見した。斜面にあった大きな岩が、何かの拍子で落ちてしまったのだろうか。ちょうどそんなふうに、大きくくりぬかれたようになった場所だった。
無事にここまで戻れたことに、絵里花はとりあえずホッとする。
「……うん、もう少し〝屋根〟がほしいところだけど、ちょうど木の枝の下になっているし、風や夜露ぐらいはしのげるだろう」
と言いながら、史明がそこに腰を下ろそうとすると、
「ちょっと、待ってください」
絵里花はすかさず、リュックの中からレジャーシートを取り出して、その窪みの地面に敷いた。
それから、二人は並んでその上に腰を下ろす。頭上の木々のはるか上、そこにある空を見上げると、すでに星の瞬きが見えた。
「足の容態はどうですか?」
落ち着くと真っ先に、絵里花はその気がかりを口にした。
「そりゃ、痛いけど、すぐに治るものでもないし。今ここで、どうにもできないことに、泣き言や不満を言ってても始まらない」
史明のその言葉は、絵里花に言うというよりも、自分自身に言い聞かせているような感じだった。
痛めた史明の足首に目を遣ると、一目瞭然に腫れているのが見て取れる。